
先週の大山の二ノ沢から一ノ沢への周回がけっこうハードだったので、今週は軽めにしましょうと西の奥様と話をしていたら、日曜日に寒風山の『森の貴婦人』の写真がアップされていた。梅雨が開けて猛暑が続く中で、まだ咲いているとは・・・・。ひょっとしたら水曜日でも貴婦人にお会いできるかもしれない。お花畑の花たちは少し早いかもしれないが、それでも少しは咲いているだろう、そう思って出かけてきた。
寒風山トンネルを抜け寒風茶屋へと車を走らせる。山の上の方は白く薄いガスがながれていた。山頂では景色が見られないかもしれないと思いつつ、逆に陽が照らずに涼しいかもしれない、そう考えながらクネクネと右に左にハンドルを切って走って行くと、トイレ下の駐車場には3~4台の車が停まっていた。
9時15分寒風茶屋の前を通って登山口から取り付いて行く。

登山口からしばらくは九十九折れの急登が続いて行く。昨日降った雨で岩はまだ濡れていて滑りやすいが、足元の悪い岩場とかにはロープや手すりが設置されていているので助かる。


西の奥様も躊躇することのない足運びで、そんな岩場もスイスイと登って行っている。
胸の前にぶら下げたカメラバックの上に、ポタポタと汗が流れ落ちていく。トイレ横の沢水で冷やしたタオルで額を拭うが、そこらじゅうから聞こえてくるセミの声が、なお一層暑さを誘う。



道の横の大きな岩にボルトが打ち込まれてシャックルが付けられていた。冬の雪の季節にロープを張るためだろうか。
すると上から女性が降りてきた。『早いですね、もうお帰りですか?』と声をかけると、
今日は御来光が見たくて朝早くから伊予富士に登っていたという。御来光は少しだけ顔を覗かせてくれただけだったが、代わりにブロッケンが見えたそうだ。
今治から来たというその女性は、首から何やら四角いケースのようなものをぶら下げていた。よく見ると携帯用の扇風機だった。『涼しいです?』と聞くと『それなり・・・でも強にすると3時間しかもたないのよ』と。
『どちらへ?』と聞かれたので『私たちは寒風に』と言って別れた。

すると前を歩く奥様から『キャー』と悲鳴が上がった。立ち止まってストックで指すところにはヒキガエルが一匹。奥様の目の前からピョンと飛んでその後じっとして動かない。雨降りのあと登山道に飛び出していたのが、歩いてきた奥様に驚いて飛んだようだけれど、そのあとは微動だにしない。
周りの土や落ち葉の保護色になっているので、見つからないと思っているのか。動いてしまうと天敵などに見つかってしまうので、じっと我慢しているのかな。
それでも我々がカメラを向けると、『ん、おかしいな?周りと同化して見えないはずなのに・・・。』とでも思っているのだろうか。

樹林帯を抜けるまでにさらにもう一匹が道の脇へと飛び跳ねた。雨降り後の山の道は何だか騒がしい。
登山口から西の方向に進んでいた道が、北に向かってくると樹林帯を抜けはじめる。見える周りの景色は相変わらずガスがかかっていてハッキリしない。


道の両側が笹原になると桑瀬峠はすぐそこだ。ここまでも東側の笹原の下から涼しい風が吹き上げていたが、峠に着くと北からも風が吹き抜けてきてとても涼しい。やはり山頂の辺りはまだガスがかかっていたが、今日のお目当てはかわいいお花たちと貴婦人。
陽が照っていなくて景色が見られなくても、この涼しい風が吹く方が良い。




水分補給をして行動食を口にいれたあと山頂へと歩いて行く。道に脇の笹が被さってくると、まだ雫の付いた笹が足元から膝辺りまでズボンを濡らす。

目の前に裏寒風の展望台から見上げる大岩壁が迫ってくる。奥様にストックで指しながら以前に登った裏寒風のルートを説明する。
お花畑までの道はヤマシグレの赤色とアザミの紫色が際だっていた。




お花畑は岩場になる。やはり昨日の雨で濡れているので『注意してくださいね!』と奥様に声をかけて登山道から脇へと入って行く。
『どうかな?』と思いながら注意深く進んで行くと、岩の下に小さなウチョウランはもう少し先?さらに奥に進むとマツムシソウが一輪だけ咲いていた。



コウスユキソウはけっこうな数が咲いていた。
この場所は足元のすぐ下はかなりの高さの崖になっているので、写真を撮るのに夢中になりすぎて足を踏み外して落ちたら即OUTだ!





咲き始めのこの花は何だろう?

結構な時間をお花畑で過ごした後山頂へと向かって歩いて行く。雨降りの後はみんな嬉しくなって飛び出してくるのか、カエルだけでなくヤマミミズもあちこちで見かける。

びっくりしたな~の木の横を通り、このルートで一番長い梯子のある場所に差し掛かると奥様が『梯子を下りるとヤマジノホトトギスが咲いていたわね』と仰った。
『あ~残念、タマガワホトトギスです』
『でもホトトギスが咲いていたのを覚えていたなんて、少しは進歩した?』
『EランクからDランクに格上げです』と笑いながら話をする。
(前回山犬嶽の西の山頂で遠くに見える三角のピークを天狗塚と言ったときにEランクに降格していた)

山頂までも樹林帯を抜けても日が差さず、笹原を風が吹き上げてくる。ドウダンツツジの落花で道が埋め尽くされている場所がある。そして笹の葉の上にも・・・・。


道が笹原の中の道になると今度はタカネオトギリの独壇場になってくる。明るい緑の笹の中に黄色の花が目立っていた。




さっき奥様と大山の雨に濡れると透明になる花のサンカヨウの話をしていたら、足元にチラッとそれらしいのが見えた。笹を避けてよく見ると、花ではなくて珍しい半透明の峨だった。

登山口から2時間20分ほどで山頂に着いた。珍しく今日は人影もなくひとり占めならぬふたり占めの山頂だ。
先週、藪コギ用に秋に着ていた服を着て汗が蒸発せずに熱中症になりかけたので、その反省もあって今日はTシャッにアームカバーといういでたちにしてみた。アームカバーはワークウエイで『マイナス6℃』の触れこみのもの。涼しいわけではなかったが確かに少し冷たいような気がする。いつもの長袖でなく半袖だと、脇が開いているのでそれも体感的に涼しいような気がした。
とにかくこの夏は熱中症対策が必須。横にいる奥様にも迷惑をかけるわけにはいかない。


山頂でお昼にする。奥様は冷たいぶっかけうどん。私はと言えば逆に焼きそば。暑いときにソースの濃い味が何とも言えないのだ。


お昼ご飯の後はいよいよ今日の目的の『森の貴婦人』に会いに行く。まだ濡れている笹をかき分けながら進んで、2年前に歩いたロープ場を下って行く。その時はアカリプタさんが尾根からわざわざ降りて裏寒風の大岩の足元を回っていたので、何か珍しい花でも咲いているんじゃないかと考えて同じように歩いてみたが、このロープ場で3人共にアブの集中砲火を浴びてひどい目にあった。



もしもの為に下る前に虫よけのスプレーを振って降りて行く。幸いアブの姿はなかったが、結構下っても貴婦人の姿は見当たらない。
先に降りている奥様に『その下の段まで降りてなかったら引き返しましょう』と声を変えると、その場所まで降りた奥様から『あっ!』と声が聞こえてきた。



少し踏み跡から外れた場所に一輪は少し茶色くなっていたが、もう一輪は小ぶりだけれど可愛らしく咲き残っていてくれた。
花の横で奥様が『貴婦人と貴婦人で写す』と言っているが、『いいえけっこうです』とお断りをして今年最初で最後の貴婦人だけをパシャリ!
二層になった花弁の濁りのない厚く濃い白。その中の葯と葯隔の色も清楚な色をしていてまさに貴婦人だ。




念願かなって貴婦人にお会いした後はロープ場を登り返していく。登るにつれて先週の二ノ沢での藪コギの際の斜面で筋肉痛になった二の腕がまた一段と凝り始めた。
相変わらず奥様はスイスイと登って行く。普段、箸より重たいものを持ったことのない私は?ブクブクと太ったお腹周りのお陰で、随分と重くなった自身の体を持ち上げて、登り切った時には息が上がっていた。




ピーカンの晴れて周辺の峰々が見渡せるのももちろんいいが、ガスが生き物のようにうごめき動いている幻想的な景色もまた一味違っていいもんだ。


さぁここからはあとは下るだけ。今日は軽めにと考えただけにいつもより早く下山できそうだ。
長梯子の場所で目を皿のようにしてタマちゃんが咲いていないか探してみるが、それらしいものが影も形も見えなかった。



こちらの岩にもステンレスの楔が打ち込まれていた。そして登山道の岩場にはロープ。道の際が崖地になっている場所は何重にもロープが張られていた。特に途中何カ所もある梯子と手すりは全てが錆びないようにステンレスで造られていた。加工も溶接も難しいステンレスを使ってくれていて、整備する人の苦労がしのばれる。




少しガスが流れたのか、シルエットにはなっているが伊予富士の山容が伺えた。振り返ると裏寒風の大岩壁の奥に山頂も見えていた。


ロープ場から出た稜線から40分ほどで桑瀬峠に降りてきた。相変わらず吹く風が心地よい。水分を口に入れて直ぐにまた下って行く。
途中でガスが流れて見え始めた東に見える稜線上に見える冠山を奥様に説明していたら、どうも奥様の見ている方向が違う。改めてストックで指して『あれが冠山です!』と説明すると『あら、違う山を見ていたわ』と。
残念ながらまたDランクからEランクに降格です。


トントンと降りて行く奥様。歩き始めは違和感のある膝も、歩き始めると油が回り始めてその違和感が無くなるが、歩行時間が長くなり、下りの時間も長くなるとやはり次第に痛み始める。着圧タイツの上に膝サポーターで保護していても無理がある。

するとまた奥様がキャーと悲鳴を上げた。指さす方を見ると朝見たヒキガエル。また道の真ん中から脇へとピョンと飛び跳ねたらしい。そして動かず沈黙の時間が流れる。
おそらく『早く無視して行ってくれ~』と思ってるだろうから、気づかないふりをしてそっとさよならと言って歩き始める。


稜線から1時間30分で登山口に着いた。

下山してすぐにトイレの横の沢水で顔を洗う。冷たい水で汗を洗うと少ししょっぱい汗が唇を濡らす。それにしてもなんて気持ちがいいんだろう生き返った。
お花畑の花たちは予想通りもう少し先の様だったが、貴婦人への謁見は何とか間に合った。これから端境期から夏の花への移り始める時期。早々に梅雨が開けて山登りには天気の顔色を覗わずに済むけれど、まだ先の長い夏に水不足が心配なシーズンになりそうだ。


ここからは今日見かけた花たち










