
先々週・先週とお山をお休みして、先週は大阪万博の酷暑の中で二日酔いのままで彷徨い、さらに帰りのバスが5時間もかかって体調を完全に崩してしまった。
その上日曜日にはその長時間のバスのせいか、久しぶりにプチギックリ腰を発症してしまった。とはいえ家でじっとしていてはますます体調は悪くなるばかり。それなら軽めにお山を歩いてこようという事で、お花の山の皿ケ嶺に出かけてきた。
いつもなら数台は車が停まっている上林森林公園の駐車場には、今日は1台だけ車が停まっていて、登山服姿の女性が車から降りてきた。
その女性に軽く挨拶をしてまずは風穴(かぜあな)へと歩いて行く。すると駐車場からひとつ上の車道まで来ると、すでに風穴からの冷気が漂っていた。
風穴の中では高山地帯に分布するヒマラヤの青いケシ『メコノプシス』を、風穴の冷気を利用して、伊予花の会の有志の方々が栽培している。


風穴から九十九折れの道。道の脇には大きな葉の中に白く塊になったギンバイソウの群生がどこまでも続いている。茎の先には十輪以上の白い花を付けているが、柔らかい茎の先に肉厚な花は、その重さのせいかほとんどの花がうつむき加減だ。
それでもたまに上を向いた中央部に咲く、梅の花に似たきれいな顔立ちの花を見ることができる。


そのギンバイソウを眺めながら登っていると、ふと首に巻いていた冷感タオルがないのに気づいた。どこで落としたのだろうか?一旦また風穴まで戻ってみるも見当たらない。仕方がないので諦め引き返していくと、登山道に出る前のショートカットした道に落ちていた。風穴までは登ってきたショートカットではなく、間違って登山道をそのまま降りてしまっていたので見つからなかったのだ。


今日はいつもと違う十字峠から山頂へと登ってみる。少し朽ちかけた木製の階段や、短い距離だがロープのかかった岩場のある急登を登って行くと稜線に出た。
引地山と山頂との三差路になった分岐では、目の前の伐採地から木陰の中を涼しい風が吹き抜けていく。西の奥様と二人して思わず『あ~気持ちいい!』と声が出る。
急登を大汗をかきながら登ってきたあとの最高のご褒美だ!


十字峠手前の伐採地も、その脇の木立の中の道。木陰で乾いた風の吹く中を気持ちよく登って行ける。そしてその伐採地の小さなピークを越えて一旦下ると十字峠に着いた。


ここで少し脇道に入る。いつもと違うルートでこの十字峠に来たのには訳があった。ある花を探して、その花の写真を載せていた方のYAMAPのルートを辿っての事だった。そのルート図にはこの十字峠から不自然に脇に入ったトラックの線が残っていたのだ。その線に沿って脇に入って目を皿のようにして二人でウロウロするも一向に見つからない。目に付くのはオカトラノオやヒヨドリバナばかり。
けっこうな時間を探したが結局見つけることが出来ず、諦め登山道に戻って山頂目指して登って行く。


山頂までは西側が広い伐採地になっていた。手前の伐採地は木立の中の道だったが、ここからは明るい日差しの中の道。それでも先ほどからの涼しい風のお陰で照り付ける日差しが苦にならない。


高度が上がってくると次第に北側の眺望が広がってくる。目線より下に白い雲が流れ、さらにその下に松山の市街地が広がっていた。
道にはまだ開ききっていないアキノタムタソウがそこかしこに咲いている。


途中にある二等三角点 行長 1270.5m。以前はたしかこの三角点と書かれた木のプレートはなかったような気がする。そのせいか今まで何回かは気づかず通り過ぎてしまっていた場所だった。

三角点を過ぎると樹林帯の中の緩やかな道になり、少し歩くと広場になった山頂に着いた。山頂には以前から置かれていたベンチと別に、新しく椅子とテーブルが置いてあった。水分補給をして写真を撮った後は竜神平へと下って行く。


足元は背の低い笹をかき分けて道が続いて行く。途中で一ヵ所だけロープが掛かった場所があるが、あとはとても歩きやすい道。静かな森の中の道と言いたいところだが、頭の上ではセミの大合唱で騒がしい。
そのロープ場の上で奥様が、すれ違った年配のご夫婦に目当ての花が咲いている場所を知らないかと聞いていたが、お二人からは分からないとの返事だった。

龍神平に着くと小さな女の子とお父さんが、ベンチに腰掛けお弁当を食べていた。『こんにちは!』と挨拶をしてその先の別のベンチにザックを降ろす。
竜神平の湿原は乾燥化が進みササやカヤが茂っているが、その草原の上を撫でて風が吹き抜けていく。今日は湿度もさほど高く、カヤの葉を波うたせながら吹いている風が気持ち良さを運んでくれる。

お昼ご飯の前に少し湿原の中を歩いてみると、カヤの中にコバギボウシの明るい紫が目立っていた。そして所々でひょろっと立つハンカイソウ。



数珠なりに咲く小さく白いヌマトラノオの花も可愛らしい。一通り湿原に咲く花を見た後は、木陰のベンチでお昼にする。ここでも前回来た時よりもベンチとテーブルが増えていた。この木陰で避暑をしながら、この山の常連の人たちが談笑している姿が目に浮かんでくる。


先に湿原を散策していた女性二人が戻ってお昼ご飯を食べている。その様子を伺いながら西の奥様が、食べ終えるのを見計らって例の花が咲く場所を知らないかを聞きに行った。
戻ってきた奥様からは『この時期に咲いていたかな?と言われたけれど、ここから山頂までの間でも見かけたことがあるそうです』と仰る。
今回はYAMAPのトラックから場所を想像したのではなく、実際に見た事のある人の話に、奥様の目が輝きだした。
もう山頂までまた登る気満々の奥様には抗らえず、へっぽこリーダーも身支度をして山頂へ後戻りする。

こもれびの森を二人して、また落とし物を探すようにゆっくりと道の脇を注視しながら登って行く。ここまでで私が寒風山で見た時は、そこそこの背丈があった記憶があると話をしていたが、目線の高さの木の枝からはまったく見当たらない。
すると前から年配の男性が降りてきた。挨拶をかわしすれ違うと後ろで奥様がまたその花の咲く場所を知らないかと聞き始めた。
私はというと相変わらず右に左に目線を写しながら登っていると、随分と離れた下から呼ぶ声が聞こえてきた。仕方がないので奥様とその男性のいる場所まで戻る。それにしても今日は同じ道を登り降りするのはこれで3回目だ。
二人のいる場所まで戻るとスマホを片手に場所の特定をしてもらっていた。自分だけでは場所を聞いても心許なかったので呼び戻したと奥様。
その男性はこの皿ケ嶺に年間200回は訪れていて、花の咲く場所はだいたい知っているとの事。そしてこの山頂までの道よりも間違いなく咲いている場所を詳しく教えてくれた。『皿ケ嶺は庭のようなもの』と仰る男性の情報を奥様は確信したご様子だ。
男性にはお礼を言って取りあえずは山頂を目指して登って行く。


山頂からはまた十字峠へと下って行くと、三角点の横に往路では気が付かなかった『山を愛した男』と彫られた石碑が埋められているのを見つけた。
家に帰り調べてみると、日本航空ジャンボ機墜落事故で亡くなった方を偲び、同じ大学のワンゲル部の方が設置したそうだ。

今日の目当ての花はここから風穴までの間に咲いているという。早くその場所に行きたい奥様の足取りは軽い。



十字峠からさらに引地山方面へ。途中から稜線から風穴への道を下って行く。
教えてもらった場所でも直ぐには見つからず、同じ道を行ったり来たり。かなりの時間を費やしたが結局探し出せずに諦めかけた時に『あっ、これ!』と奥様から声が上がった。道の脇には葉の下に隠れるようにして咲く小さな花が目に飛び込んできた。



お目当ての花はこのアクシバ。YAMAPに載っていた写真を奥様に送ったら、ぜひぜひ見たいとなった。やっとのことで見つけらる事ができた、おどけた顔をしたクルリンパは、思っていた以上に小さくて可愛らしくて、寒風山で見た記憶とは違っていた。

晴れてお目当ての花にも出会え、他にもたくさんの花を見ることが出来た。風穴では涼を求めて大勢の人が柵の周りを囲んでいた。
駐車場でザックを降ろしているとアクシバの場所を教えてくれた男性が降りてきた。『ありがとうございました。お陰で見つけることが出来ました。』とお礼を言うと、今度はヤマホトトギスが咲いている場所やトイレの裏の花壇に咲く花の名前を教えてくれた。
軽めにと香川から訪れた皿ケ嶺だったが、松山市内からは1時間もかからず来られて、四季折々の花たちを見ることのできる、市民にとっては手軽で素敵な山だった。
今日見かけた他の花たち












