伊予富士に心変わりしてしまいました!


今シーズンは是非歩きたいと思っていた大山。ただその大山の紅葉はまだ少し先の様子だったので、今週はどこに登ろうかと色々と考えた結果、西の奥様と二年前に見た裏寒風の紅葉をもう一度是非見てみたいという話になり、それではという事になったのだが、ただその裏寒風はもちろんの事、寒風山の紅葉の様子もYAMAPで検索してもさっぱり上がってこないので、取りあえず寒風山へ正規のルートで登って、南西峰辺りの紅葉の様子を伺いながら、色づきが良ければ裏寒風を降りてみようという事になった。

 

9時前に着いた寒風茶屋のトイレの下の駐車場は既にほぼ満車状態で、一番奥に1台分だけ残っていたスペースに車を停めて支度をしていると、先に到着していた何組かの人たちが準備を終えてスタートして行った。

空気は冷たいが風もないのでそれほど寒さは感じなかったが、薄い上着を一枚羽織ってトイレを済ませて我々も歩き始める。

 

 

 

いつもの事だが登山口からしばらくは梯子やロープ場のある急登が続いていく。その急登が終わる頃にふと『車のカギを閉めたのだろうか?』と思い始め、気になったので一応確認しに引き返すと、やはり鍵を閉め忘れていた。今日はもう一度その急登を登る羽目になる。

 

 

岩肌の急登から丸太のベンチが置かれた辺りからは緩やかな歩きやすい道になる。道の谷側には木々が色づいているのが見え始める。その緩やかな道から少し急な坂になると着ていた上着が暑くなり、一旦止まって上着を脱ぐ。上着を脱いだ後その横で奥様はすぐさまおにぎりを頬張っていた。

 

 

樹林帯を抜け道の脇にシコクササ現れると、頭の上には青空が広がっていた。最初に見えたのは冠山。ここで奥様に『あの山は?』と質問してみるも、なかなか山の名前が出てこない。やっとの事で冠山と答えてくれたものの、『時間切れです!』

 

 

その冠山を横目に見ながら少しづつ高度を上げていくと、伊予富士に続く尾根の東面が緑の木々に混じって、黄色やオレンジ色で色づいている様子が伺えた。

 

桑瀬峠に着くとおじいさんが一人一眼レフで写真を撮っていた。

肝心の南西峰直下の裏寒風の様子はというと、陽が当たっていないせいもあって色づきは今一つに感じられた。

 

振り返って写真を撮っているおじいさんの方を見てみると、錦秋の山肌の奥に霧氷が付いて薄っすらと白くなった伊予富士の山頂が見えた。

同じように見ていた奥様と顔を見合わせて『どうします?』と話しかけると、考えていることは同じだったようで『伊予富士に行きましょう!』となった。

後から来た三人組は寒風山へと歩いて行き、写真を撮り終えたおじいさんからは『どっちに行くの?』と問われて『霧氷が見えているので伊予富士にします。』と答えると、『あっちの方が景色もいいしね』とニコニコしながらおじいさんは寒風山へと歩いて行った。

 

 

桑瀬峠から稜線に乗ると周りには色づいた木々が立ち並んで、正面に見える伊予富士が『早く霧氷が解けないうちにおいでよ!』と我々を呼んでくれている気がした。

桑瀬峠の手前では青空が広がっていたのに、いつのまにか雲が天空を覆い始めていた。陽の当たらない寒風山の南西壁は暗く落ち込んだ雰囲気がしたが、陽が当たると一瞬にしてその表情を変えていく。『あれ?けっこう色づいているじゃん』と伊予富士に心変わりしたのを少し悔いたが、『この先の景色に期待しましょう』と、奥様に話しかけながら歩いて行く。

 

 

 

振り返ると桑瀬峠の東面の彩にも陽が当たって輝いていた。

次郎笈のトラバース道に一本楓が立っているが、この斜面にもシコクササの中に一本楓が立っていた。しばらく稜線から下のトラバース道が続いていくと、右手に見える稜線もきれいに色づいていた。

ただ登山道には陽が当たらず吹き抜ける冷たい風に、途中で立ち止まって上着を着こんでいたご夫婦と一緒に『寒いですね~』と言いながら我々も上着を羽織る。

 

 

 

桑瀬峠から続く稜線はここから左に行く鷹ノ巣尾根(エントツ山さん命名)、右に折れると伊予富士に続く稜線になる。

少し窪んだ鞍部から右に折れると伊予富士への笹原尾根が現れた。その尾根から振り返ると鷹ノ巣尾根の双耳峰から始まる全容が見渡せた。

 

 

 

 

『こんなきれいな道だったかな?』と言ったかと思うと『私、伊予富士に登ったかしら』とまで言い始めた奥様は、何年か前にWOC登山部で歩いたのを全く覚えていない。

笹原越しには西条市の壬生川の火力発電所のエントツが見えた。

 

 

 

ここまで歩いてもお日様は顔を出してくれない。陽が当たらない山肌の紅葉はやっぱり今一つ冴えない。それでも一瞬でも陽が当たるとその彩度は一気に上がって、二人で『ほらあそこ!』『ほらあれ!』と言い合いその瞬間を眺めながら歩いて行く。

 

 

 

 

目の前の伊予富士もガスが次々と流れて来て山頂が見え隠れしている。そのせいで桑瀬峠から見えた霧氷の様子もどうなっているのか伺えない。近づくとその艶やかさが分る楓だったが、やはり青空の下で眺めてみたい。

 

 

 

ここからいよいよ四国三大急登(相栗峠から大滝山・石墨山そして伊予富士)のうちのひとつの山頂へのアプローチが始まる。先日歩いた石鎚山の東陵ルートの笹滝ほどではないが、ここも足元が笹で覆われて歩きづらい。

場所によってはストックを抱えもち、笹の葉を握りながら身体を持ち上げていく。

 

 

 

笹原の急登が終わると一旦樹林帯の中に入る。周りを見ると楓の落葉で絨毯が出来ている。これが散る前だったらオレンジ色に染まった空間の中の素敵な道だったのだろうに、ピークを過ぎてしまっているのが残念だ。

 

 

その楓のプロムナードを抜けると山頂直下の笹の中に露岩が点在する道。まだ少し濡れたヶ所のある岩肌に足を滑らせないよう注意しながら登って行く。

空が刻々とその表情を変えていくと、それに合わせて山肌の色づきも違って見える。



 

 

急登が始まる手前で『お腹が空いたわね、山頂まではどれくらいかしら』と奥様が騒ぎ始めた。『あと20分くらい、12時には着くでしょう』と答えると、『いつもそう言って騙されてきたのよ』と愚痴をこぼしていた。

そんな話をしていたことも急登で忘れてしまったのか、いつの間にか山頂に着くと『あら山頂はこんなに狭かったかしら?』と奥様。いやいやこの伊予富士に登ったことすら忘れていたじゃないですか。

山頂には3組のご夫婦と一人の男性が腰を下ろしてお昼ご飯を食べていた。

山頂から西の東黒森山に続く稜線は勢いよく雲が流れて、その稜線も見え隠れしていたが、雲が流れると子持権現瓶ケ森までの稜線も眺められた。ただ重くのしかかった雲が恨めしい。

 

 

 

 

 

冷たい風が吹く中で我々も腰を下ろしてお昼ご飯を食べる。吹く風がとにかく冷たく耳も手も痛い。タオルをほっかむりしてさらにフードを被っても寒かった。これからは服装に注意が必要だと二人で話をする。

 

 

 

青空の下の眺望が最高なのはもちろんだが、雲が流れてどんどん移り変わって行く景色も幻想的でいいもんだ。桑瀬峠で見えた霧氷はすでに消えていたけれど、『今度は紅葉がピークの時に来ようね』と話をしながら下山を開始する。

 

 

 

笹で覆われ足元の見えない場所では登りの時よりさらに注意が必要だ。岩につまずいて転びでもしたらこの急坂、そのまま下までおむすびコロリンと転げ落ちそうだ。

 

 

 

 

相変わらず雲が流れて歩いてきた稜線の色を薄くしていた。

 

 

 

すると今までずっと雲に覆われていた寒風山の山頂が一瞬顔を出した。その手前の稜線の北面の紅葉はほぼ終わりかけていたが、ピーク時にはさぞや見応えがあっただろうと思うと、紅葉狩りのできる場所がまたひとつ増えた。

 

 

 

振り返ると雲が流れて伊予富士の山頂がくっきりと見えた。その山頂に続く稜線はあの急登があったとは思えない、たおやかな山容をしていた。ただその両側は岩壁で切れ落ちまた違った顔をしていた。

 

 

 

稜線上の小ピークを登り鷹ノ巣尾根の双耳峰が近づいてくると『あそこは歩けるのかしら?』と奥様が仰るので、『雪山の時に歩いた人は知ってますけど』とエントツ山さんの話をする。

『途中の分岐の鞍部で踏み跡があったでしょう、そこが取り付きかもしれません』と言うと、『行ってみますか?』と即返事が返ってきた。『しまった、いらん事を言ってしまった』と思っても後の祭り。奥様はもうすでにその気になっていた。



 

 

稜線北面の紅葉をじっくり見ることもなく、鞍部に着くと直ぐに踏み跡を辿って奥様が登り始めた。ただ踏み跡は直ぐに分からなくなり、周りは灌木に覆われ始めた。その枝を掻き分け奥様は登って行ったが、『これ以上は無理、やっぱり雪が積もった時でないと進めないのかも』と言いながら降りて来た。

 

 

先に登山道まで降りて桑瀬峠へと写真を撮りながら歩いて行くと後ろで『あっ、テープがあるわ』と声がした。まだ奥様は諦めきれない様子だったが、私はもう随分と先に進んでいたので戻らずそのまま登山道を下って行く。

 

 

道が稜線から南側のトラバースになると寒風山の南西壁にも陽が当たり始めていた。さらに少しすると一瞬雲が流れて寒風山の山頂そして笹ヶ峰の山頂も見る事ができた。

 

 

 

 

鷹ノ巣尾根へのプチ寄道もあって伊予富士山頂からは1時間20分ほどで桑瀬峠に着いた。峠ではすでに人影はなかったけれど、ここにきて日差しが道標を明るく照らしていた。

 


峠からは歩き慣れた道、35分ほどで登山口へ降りたった。満車だった駐車場も車の台数は減っていて、我々も今日のもう一つの目的のために直ぐに車に乗り込み走り始めた。

 

 

 

その目的地は以前から行きたかったアウドドアショップのクロスポイント。以前、四国中央市の寒川町にあった時は、何度が尋ねて買い物をしたりしたが、店舗が西条市に移転してきて、定休日が水曜日なのでいつも訪れることが出来ずにいた。それで今回はわざわざ火曜日に予定を変えて、山を下りた後初めて訪ねることが出来た。

ショップには高松のショップにはない店主のこだわりのあるブランドの登山用品が並べられ、そんな目移りする商品を見ながら、今回は買い物はせずに奥のスペースで美味しいコーヒーとコーヒーロールを注文してゆっくりと時間を過ごした。

今日の裏寒風の紅葉はどうだったか気になるところだが、この季節に初めて歩いた伊予富士は、予想外に紅葉を楽しめるルートだった。来年からまたひとつ紅葉狩りで歩く山が増え楽しみが増えた。

さてさて大山の紅葉は来週・再来週になるかな?