今年の夏の遠征は西穂独標でした!

 

昔から『梅雨明け10日間』は天気が安定すると云われていて、四国地方が思ったより早く梅雨明けして、さて甲信越地方はどうかなとずっと気を揉んでいたのは、この夏久しぶりの遠征で西の奥様と同級生の女性3人で、西穂独標を計画していたからだった。

その甲信越地方が20日には梅雨明けが告げられ、予定していた遠征は28日からだったので、丁度いい感じで晴れてくれるだろうと思っていたのに、東北地方に残る梅雨前線が影響してなのか、天気予報の降水確率は少し前の30%から直前には40%になってしまっていた。

それでも何とか晴れてくれるのをテルテル坊主に祈りながら出かけてみたが、前入りの28日の高山市内は雨。登山日の今日29日も残念ながら朝から霧雨で、東に見えるはずの山々には重く雲が圧し掛かっていた。

行程としては、まずは新穂高ロープウェイに乗って一気に2156mまで上がり、そこから西穂高山荘、西穂丸山を経て2701mの西穂独標まで登る計画。

西穂高岳は11のピークからなり、1峰が西穂高岳主峰、4峰がチャンピオンピーク、8峰がピラミッドピーク、そして11峰が西穂独標となる岩稜だ。

前日に高山市内に入りして観光。登山日の29日に先ずは新穂高ロープウェイの第2駐車場を目指して国道158号線を車を走らせる。途中崖崩れで通行止めになった場所では迂回路を利用、平湯温泉から奥飛騨温泉郷を通って鍋平の第二駐車場に着いたあと、しらかば平駅から8時45分発の始発のロープウェイに乗り込んだ。

ロープウェイは事前にネットでチケットを購入。乗車券とは別に優先券を300円で購入すると、乗車口で並んでいる一般の人たちとは別に優先して乗ることが出来た。

 

ロープウェイを降りて展望デッキのある4階に上がってみると、正面に見えるはずの笠ケ岳の稜線は影も形もなくまわりはまっ白な世界だった。

残念な展望台をあとに3階まで降りると、トイレを済ませた登山者の人たちが準備を終えてスタートしようとしていた。

 

 

駅舎からは「頂きの森」の原生林の中の遊歩道が続いていて、観光客は展望台まで歩いたり、静かな森を散策したりして楽しんでいた。

その遊歩道の最奥が『観光客は立ち入り禁止』と書かれた看板のある登山口となる。

 

 

登山口からは一旦下って行くと、朝まで降っていた雨が森の中をしっとりと濡らし、足元では水たまりや濡れた木道で滑りやすい道がしばらく続いていく。

 

すると道の脇に見た事もないような大きな葉の群生。後ろから来た人が『ミズバショウです』と一緒にいた人たちに説明している声が聞こえてきたが、何も知らない私たちは『ミズバショウ?』と訝しんでいた。ただ帰って調べてみるとミズバショウの葉は夏には1m近くまで大きく成長するらしく、この葉は本当にミズバショウの葉だった。

 

 

2171mの標高点を過ぎると足元の道の様子が変わり始める。大きな岩が転がり斜度も次第に急になってきた。そんな大岩を避けながら間を登って行くのだが、濡れた岩は苔が生えて滑りやすい。

 

 

さらに斜度が増してくると、積み上げられたように平らな岩が階段状になっていて比較的登りやすくなっていた。

『これって自然にできたものではないわね、誰かが整備してくれたのかな?』と言いながら、一段一段段差のある岩に足を置きながら登って行く。

 

 

そんなしっかりとした岩の急登を過ぎ少し緩やかになってきたと思ったら、目の前に小さな小屋が現れた。さらにその先に今日最初の目的地の西穂山荘の大きな建屋が目に飛び込んできた。

 

 

 

建屋を正面に見ながら左に回り込んで進むと、山荘のエントランスに降りたった。広場のベンチでは何組かの人たちが腰を下ろして一息入れていた。

山荘は25年ほど前に一度訪れた時の記憶のまま、変わらぬ姿をしていた。

 

さっそく3人で山荘の中に入り、名物の西穂ラーメン(醤油)を注文する。朝一番始発のロープウェイに乗るためにホテルの朝食はキャンセルして、ここまでは途中の車中でおにぎり一個を頬張っただけだった。それもここで朝ラーメンを食べるためだった。

名物だというラーメンは高所にある山小屋としては珍しく、生めんを使っているらしく、少し濃い目の醤油味のスープで塩分も補給して美味しくいただく。

 

 

 

山荘でラーメンを食べながら40分ほどゆっくりと過ごした後、まずは西穂丸山を目指して登って行く。山荘からの道はさらに大きな岩が転がっていて、その岩と岩の間を縫うようにして登って行く。

 

 

急登が終わると比較的緩やかな広尾根が続いていく。小さくアップダウンをしながら歩いて行くと広場に大きなケルンが現れた。

そのケルンを見て西の奥様が、『私も!』と言って石を積もうとしたら、積まれた石が崩れそうになって慌てる奥様。

 

 

一つ目のケルンからはハイマツの間を抜けていく。少し離れた場所からは四国では聞いたことのないような鳥の鳴く声が聞こえてきた。ハイマツを見るとライチョウがひょっこり現れないかと期待してしまう。

 

ゴゼンタチバナ

 

二つ目のケルンを過ぎるとハイマツの尾根の向こうに霞んだ西穂丸山が見えた。

山頂ではロープウェイに一緒に乗り込んだご夫婦から山頂標の前で『すみません写真を撮ってもらえませんか』と声を掛けられた。二人が並んだ写真を撮ってあげた後、代わりに私たちの写真を撮ってもらう。

 

リンネソウ

 

西穂丸山を過ぎるとハイマツの間に先ほどより小さな石が転がるガレ場が続いていく。石は足を置くたびに転がり歩きづらく、予測できない足の動きが膝に堪えてくる。

山荘でゆっくりしたせいか同じロープウェイに乗って来た人たちはもう独標に付いている頃だろうから、上から降りてくる人のすれ違いもなく、3人で静かにマイペースで登って行く。尾根の両側からは帽子が飛ばされそうなくらいの強い風が吹き上げてくる。

少し手前で西の奥様は帽子の紐を、同級生の女性はキツクほっかむりで帽子が飛ばされないようにして歩いて行く。

 

 

標高はすでに2500mを越えようとしていた。久しぶりの高所のせいか、いつもよりゆっくと歩いているのに必要以上に息切れがする。それを二人に言うと、西の奥様が買って来た酸素ボンベの空気を『50円で吸わせてあげようか』とニヤケた顔で仰った。

時折少しだけ青空が顔を覗かせるが、一瞬でもとの白い世界に戻って行く。

 

 

道の脇にはもう終わりかけのハクサンシャクナゲが咲いていた。四国で見るシャクナゲよりも低木で花も小さく、厳しい環境に置かれているのが判る。

 

するとハイマツの奥に独特な形をした西穂独標が蜃気楼のように一瞬見えた。山頂には何人かの人の姿も見える。『あっ、独標!』と前を歩く二人にすぐに声を掛けるが、二人が視線を移した時には、すでに独標の姿は消えて見えなくなっていた。

 

 

 

ガレた白い石の間には、そこかしこに小さな小さなイワツメグサガ咲いていた。白い石に白い花。そんななかで一輪だけ咲いていた紫色のイワギキョウが目にとまる。

 

 

標高的には雲の上になるのだろうか、ガスが流れると雲の上に青空が広がっていた。『このまま晴れてくれたら』と思うのもつかの間、直ぐにまたガスが流れて青空は消えていった。

 

それでもガスが流れると、時々見える細い山頂標の建つ西穂独標が近づいてきたのが判る。尾根の右側の麓には濃い緑の中に蛇行した梓川の白い河原が見えた。

西穂独標の手前のピークは登らずに道は左側をトラバースして行く。

 

 

トラバースから一旦鞍部に降りて、ヘルメットを装着すると、すぐに前から一組のペアが降りてきた。狭い岩の上では離合するときは十分に注意が必要だ。

岩にペンキで描かれた〇や矢印が、岩稜歩きの雰囲気をさらに演出してくれる。

白いガスで周りが見えないのが逆に高度感を感じず恐怖心もなく歩いて行ける。

 

 

 

岩塊を降りたところで持っていたストックをザックに仕舞い、『さぁそれではアタック開始です!』と二人に声をかけ登り始める。

ここからも岩に描かれた矢印を目印に右に左に振りながら、段差のある岩ではしっかりと手をかけ三点支持で登って行く。

 

 

久しぶりの岩稜に気持ちがどんどん高揚してくる。一ヵ所だけ鎖がかかった場所を過ぎるといよいよ山頂は間近。

 

 

後ろから来る二人も順調に登って来ている。一方通行ではないここでは、上から降りてくる人との離合に、何度かはしばらく立ち止ってはやり過ごす。

 

 

最後に5人ほどのパーティをやり過ごし登って行くと山頂に着いた。途中で遠目には平らに見えた山頂だったが、意外と狭く岩でゴツゴツした山頂だった。

 

 

近くに居た人に写真を撮ってもらった後、北側に見えるはずの西穂高岳までのピークが見えないかと、しばらくの間岩に腰掛け待ってみるが、いつまで経っても薄くシルエットが見えるだけだった。時々麓の岳沢のカールも見えたが期待薄で諦め山頂をあとにする。

 

 

登りよりもやはり下りは注意が必要だ。けっこう段差のある岩では無理せずお尻をついて慎重に降りて行く。往路の登りでは元気よく歩いていた小学生も、この下りの段差のある岩場ではやはり足の長さが違うので、少し苦戦している様子だった。

 

 

花の山と云われる西穂だけあって、ヤマブキショウマの奥の霧が流れた斜面には、小さな花があちらこちらに咲いているのが見えた。同じようなクリーム色したイワオウギも何輪か目に付いた。

 

 

一瞬だけ東側に見えた稜線は、上高地の対岸の徳本峠辺りの稜線だろうか?。さらに奥にも薄く峰々が見える。これが晴れていたならと思ったが、贅沢は言ってられない、雨に降られなかっただけでも良しとしよう。

 

往路の道から間違って少し道を外すと、花は開いてはいなかったがトウヤクリンドウが数輪、岩の間から顔を覗かせていた。

 

ゴロゴロ石の下り坂。登りの時と同じように足を置くと石が転がり、不意な動きにその都度ガクとなって膝が痛む。

白一色の世界にあって西の奥様のザックと、小さくてもミヤマアキノキリンソウの黄色い色が目立つ。

 

 

そんなゴロゴロ道をやっと降りて平らな西穂丸山で一息つく。その西穂丸山の先ではカラスより少し小さめの鳥が、枯れた倒木の上でピョンピョン跳ねていた。ひょっとしたらと思ったがライチョウでなくて残念だ!

 

 

道に大岩が現れると直ぐに西穂山荘赤い屋根が見えた。山荘の周りもお花畑。

オタカラコウやヤマハハコ、ハクサンフウロと色とりどりの花が咲いている。

時間的にはもう日帰りの人の数は少なく、足元がサンダルのテン泊と山荘泊の人たちの人数が増えて広場でのんびりとした時間を過ごしていた。

今日はテン泊なのかダウンを着込んだ小学生とお父さんがベンチで楽しそうに話をしている。私たちも隣のベンチに腰を下ろして女性陣はおにぎりを、私は山荘で買ったクリームパンを頬張る。

 

 

 

 

テン泊の人が食事の準備をしている。今日ここで泊まったなら明日は西穂高岳まで行けるだろう。ただロープウェイからの日帰りの私たちには西穂高岳まではちょっと無理があるかな?

 

山荘の横には東邦大学医学部の診療所があった。朝ここに来る時にすれ違った若い女の子が、診療所で交代して降りて行くという話をしていたので、医学部の学生さんだったようだ。

 

時間は14時50分前。15時45分の下りのロープウェイに乗りましょうと二人に声をかけ名残惜しいが山荘を後にする。

 

 

土道と違ってゴロゴロした段差のある石の道は、下りでもあまりスピードが上がらない。振り向くと二人は楽しそうに話をしながら降りて来ている。道の脇には四国の山でもよく見るカニコウモリが咲いていた。

 

 

 

この辺りでロープウェイまでの約半分の距離。ただ時間は15時20分になろうとしていた。このままでは45分の便には間に合わない。仕方がないので1便遅らせて16時15分の便に乗ることにする。

下山後自家用車なら気にならない時間も、交通機関になるとどうしても最終便の時間が気になってしまう。ここのロープウェイの最終便は16時45分。山の時間とはいえ最終便としては少し早いような気がする。

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急坂が終わると木道が見えた。ここま降りてくると一息つける。二人が降りてくるのを待って歩き始めると、木々の間から陽が差し込み始めた。

 

 

『山を下りたら晴れたなんて、登山のあるあるね』と言いながら歩いて行くと、薄暗い森の目の前に光のシャワー、薄明光線が射しこんだ。終日あまり景色がよくなかったなかで、最後の最後にハッとする景色を見せてくれた。

 

『頂の森』まで来ると今日最後の花、可愛らしいコバノイチヤクソウが一輪咲いていた。

 

晴れていれば槍ヶ岳まで見えるはずの『槍の回廊』もまだ白い白い景色の中で、観光で訪れた家族連れも少し残念そうだった。

 

西穂高口駅まで戻ってくると登山客の姿はもうなく、観光の人たちが改札口に並んでいた。屋上のテラスでは陽の光が射し始めたが、向かいの笠ヶ岳は最後までその姿を見せてくれることはなかった。

 

 

ロープウェイが動き始めると、みるみる南側のガスが流れ晴れた景色が広がってきた。麓へと続くロープウェイも景色が見え始めたが、目当ての東側の標高の高い峰々は相変わらず雲の中だった。

 

 

ロープウェイを降り、登山靴を脱ぎ高山市内へと車を走らせる。

周りでは薄暮の中で青空が広がり始めていた。せっかくならと市内にあるアルプス展望公園に二人を案内してみる。

公園では今日一度も見ることが出来なかった笠ヶ岳。そして槍ヶ岳から続く穂高連峰、さらには乗鞍岳までが見渡せ、指を指しながら二人に山座のレクチャー。槍の小さな穂先が見えると、二人も『見えた見えた』と言いながらご満足の様子だ。

山の中では終日ガスに囲まれ周りの景色はほとんど見えずに終わったが、それでも予定していた西穂丸山と西穂独標に登ることができ、今年の遠征が無事終了した。

あおのアルプスの峰々を眺めながら、さてさて来年はどこの山に登ろうかと思いをはせたあと、軽い疲労感に包まれながら気持ちよく公園を後にホテルへと車を走らせた。

 

 

今回のYAMAPです。

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