梅雨のこの時期は苔~コッコの山犬嶽

 

週間天気予報は梅雨のこの時期らしい予報。でも家でじっとしていても性に合わないので、雨降りでもどこか歩けるところがないかと考えて、どうせならこの季節に似合う景色が見られる場所をという事で、雨降りでイキイキしてるだろう苔の名所の山犬嶽に出かけることにした。

山犬嶽なら多少の雨でも森の中なので傘をさして歩けるので問題はない。それに昨年の3月に出かけた時は予想もしなかった雪が降っていて、苔の庭は緑ではなく白一色の雪景色で苔は雪の下に埋まっていた。やはり一面の緑の庭を見てみたかった。

計画を西の奥様に連絡した後、WOC登山部のFBに本隊と別部隊が山犬嶽に行こう!と計画が上がっていた。ひょっとしたら山の中でお会いできるかもしれないと思いながら出かけてきた。

 

県道16号線を上勝町役場を過ぎて樫原の集落へと車を走らせると、対向車に見覚えのある別部隊の煎り人さんの車が。いったん止まってサイドミラーで様子を見てみると、あちらも一旦停まったが、そのまま行き過ぎて行った。

たしか6時に地元を出発したはずなのに・・・・まさかもう登って帰るところ、なんて二人で話していると、樫原の集落への道に今日・明日は舗装工事のために通行止めの看板。仕方がないので上勝町役場の先まで戻って、剣山スーパー林道側から迂回して行くことにして引き返した。

山犬嶽の駐車場は樫原の集落の下と、何年か前に登山口近くの細根の集落側にもできていた。細根の集落側はしばらくガードレールもない細い道が続いていたが、駐車場に着くと何と煎り人さんが身支度をしていた。

こちらは8時に地元を出発してきたので『どうしたんですか?』と尋ねたら、山川町側から土須峠を越えて4時間かかって来たそうだ。こちらは地元から2時間だったので、ちょうどドンピシャ。『お久しぶりです!』と笑顔で挨拶をする。

 

先週は雨予報だったのが昨日は曇り予報に変わっていた。奥様が『傘がいりますか?』と尋ねてきたので『大丈夫でしょう』と。空はなんとかもちそうな雰囲気だ。

登山口へは駐車場から樫原の集落に向かって少し登って行く。

 

 

登山口は峠から一段登った最終民家の横になる。道標に落とし物の帽子がひとつ。

民家の上の斜面にはウツボグサとホタルブクロがピークを迎えていた。

 

 

 

民家の上のゲートを開けて登山道へと入って行く。

曇り空で日差しはなかったが、とにかく湿度が高そうだ。直ぐに額から汗が流れ出る。

暫くは枝打ちがいき届いた杉林の中を歩いて行く。小人数だが久しぶりの隊列だ。

その杉の落ち葉の中に所々で小ぶりのテンナンショウが立っていた。

 

 

 

 

この登山道は分岐の場所には立派な道標が立っているが、何故か日本語と英語表記になっている。徳島のマイナーなこの山奥に果たして外国人は来るのだろうか?それとも私たちが知らないだけで、海外では有名な場所なのだろうか?

 

 

しばらく歩いて水分補給休憩で、煎り人さんが立ち止まった。すると道の脇を何やら覗き込んでいる。

その目線の先にヒキガエルが一匹。いつものようにじっとして動かずにいた。

 

 

登山口に道標にもあったが、この道はミニ四国八十八ケ所霊場のコースにもなっている。道の脇、至るところで石仏が道行く人たちを見守ってくれている。

 

登山道から左に折れて苔の庭へと入って行く。大岩を回り込むといよいよ苔ワールド。すると途端に気温が下がり、前方から冷気が押し寄せてきた。

メンバー全員が『涼しい~!』と声をあげる。

 

昨日降った雨のお陰で、予想通り苔はイキイキとしていた。

苔玉が巨大化したような丸い苔岩がゴロゴロと転がり斜面を埋め尽くしている。

つい最近まで新録に目を奪われていたけれど、この場所は木々だけでなく林床も苔の緑で覆われ、圧倒的な量で緑が迫ってくる。

一面の雪景色だった昨年とは正反対の苔ワールドだ!

 

 

 

 

この場所の写真でよく出てくる中央部の巨大苔玉の小山も、前回は雪に埋もれていたけれど、今日はいつものようにぐるっとその周りの苔の緑を見て回る。

 

 

 

 

煎り人さん達はここまで。今日はここから大川原高原に移動してアジサイを見て帰るそうだ。さすがに帰りは高速を使って帰ると笑いながら話してくれた。

記念に4人で写真を撮って(煎り人さん撮影)別れる。

 

 

 

 

登山道まで戻って山頂目指して歩き始める。ミニ霊場の石仏は岩に囲われ軒下にひっそりと佇んでいたが、そんな屋根のない石仏はしっかりと苔で覆われていた。

 

 

自然林が終わると杉林の中の道になる。段々になった道を登りきると、杉の巨木に囲まれた竜王山・東光寺になる。

 

 

以前にWOC登山部の15人で来た時は、この東屋でお昼ご飯を食べたのを思い出した。

中に入るとデフォルメした龍の彫刻の欄間が飾ってあった。これだけ立派な彫刻を前回見た記憶が全くないのは、大勢で賑やかだったので気が付かなかったのかもしれない。

 

 

 

そしてもう一つ寄進者の名前が掛けてあった。何気に眺めていたが『四阿』とはあずまやと読むのを、この時初めて知った。

 

 

東屋から横にあるトイレの前を通って山犬嶽山頂を目指して登って行く。

きれいに枝打ちされた杉林は下まで日差しが届いている。しばらくは急登が続いて行く。

 

 

 

山犬嶽山頂は崩潰以前は山犬が口を開いたような岩石が形づくられていたので、その名がついたと云われているが、今はその面影はなく、平らな広場になっている。

小屋の中の石組の下には中央に役行者。その横には役行者が従えていたという夫婦の鬼の前鬼・後鬼が祭ってあった。角のない前鬼・後鬼の鬼らしくない姿の謂れは昔話に残っていた。   奈良県の昔話

 

 

山頂標の横には新しく焼き物でできたヤッホー地蔵があった。以前は木彫りのヤッホー地蔵を徳島の山々で見かけていたが、最近はこの焼き物に変わっている。

どこの誰が作っているのかな?

ヤッホー地蔵にキティー山岳会のプレート。昔からの山頂の名物が揃い踏みしていた。

 

 

 

写真を撮ったらすぐに双耳峰の西峰に行ってみる。二度ほど小さくアップダウンをすると左手の斜面の上が西峰だった。

足元が崩れて切れ落ちているのは1701年の豪雨で崩れたものなのか?その時の豪雨で山頂付近が崩れ、直径10メートルを超える巨岩や、粉々になった岩が山の斜面を埋め尽くしたという。雨の多い地域で、長い年月をかけて岩の表面をコケが覆い、現在の姿になったようだ。

 

 

 

 

すると横に居る奥様が、南の一番奥に見える稜線上に飛び出た三角のピークを見て『あれは天狗塚?』と聞いてきた。『はぁ~~!』。一瞬何を言っているのか分からず聞き直すと、『ほらほらあの三角!』と仰る。

『ブ・ブ・ブーー、レベルEランクに降格です!』

どうやら三角形のピークはどこから見ても天狗塚と思い込んでいるようだが、その左側には阿南市の街並みが見えている。どう考えても・・・・・?

 

西峰から山頂に戻って東光寺まで下り、四阿(あずまや)の下でザックを下ろしておにぎりを頬張る。お昼ご飯ではなく行動食で済ませるのは、下山後の楽しみを取っておくためだった。

 

おにぎりを口に入れて取りあえず落ち着いた後下山開始。

往路とは違う道を下って行くと、巨岩の間を抜けたり潜ったりしながらのまた趣の違う道になる。

 

 

 

 

 

見上げても見切られないほどの巨岩がゴロゴロ転がっていた。これらが崩壊の際に山頂から転がってきた岩だろうか?

その岩の下にはミニ霊場と、最後の巨岩の下は金毘羅宮が祭られていた。

 

 

 

 

 

四国災害誌では1701年に崩落があったとされているが、案内板に書かれている伝承では1660年に山肌が崩れ落ちたとされている。

 

さらに下って行くとフタリシズカの群生地があった。白く二本の花が立ったものは一輪しか見られなかったが、これからしばらくして一斉に花を咲かたところを見てみたい。

 

 

一息入れた後の東光寺から50分ほどで登山口に着いた。登山口から駐車場に戻る間にも小さな草花が咲いていた。

距離も標高差もなかったが蒸した山の中で、たっぷりと汗を掻いて少しは運動になったかな?

 

 

 

 

 

 

車に乗り込んだ後、樫原の集落にある棚田に立ち寄る。樫原の棚田は平成11年に『日本の棚田百選』に認定され、平成22年には徳島県で初めて『国の重要文化的景観』に認定されている。

標高500~700メートルに分布した田の畔の形状は、曲線で山の等高線があぜの形状を映し出している。

 

 

樫原の棚田を鑑賞した後は、集落の道を引き返して府殿の集落から県道へと降りて行く。時間は14時を過ぎているので、お目当てのあの店も空いているだろうと思って車を走らせると、予想通り狭い駐車場に車はなく、中に入るとお店の人だけだった。

さっそく中華そば肉入り大を二人で注文する。(値段はびっくりするくらい安い)

出てきた中華そばは鶏ガラスープの甘目であっさりとしたとても美味しい中華そば。お腹を空かしていたのであっという間に完食した。食べ終えた後もまだもう一杯食べられそうと二人で話をした。

 

 

お腹を満たした後は今日最後の目的地、星の岩屋に寄って行く。

その昔、災厄の悪星を弘法大師が石に変えて岩屋に封じ込めたという伝説から「星の岩屋」の別名のある星谷寺は、四国八十八カ所第19番札所立江寺奥の院

 

 

 

本堂横の不動の滝は、頭上から落下する滝水を裏側から眺められることから『裏見の滝』とも云われている珍しい場所だ。

滝から落ちる水の量はわずかだったが、暗がりの中から明るい外に落ちる滝は神秘的だった。ただ写真に撮るにはなかなかうまく撮れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

星の岩屋から駐車場への帰り道。小さな花や葉の上にはさらに小さな蜘蛛や蝶の姿があった。鬱蒼とした木々の中に静かに佇む、岩屋の巨大な岩から流れ落ちる水やそれらの虫たちを見ていると、長い時間をかけて創り上げた自然の造形と、変わらぬ営みを見て、ゆっくりと時間が流れていくの感じた。