世界の中心で大汗をかいた庵治の5座!

 
 
今週の水曜日の天気予報は山間部がお昼前後からの天気が怪しく、終日晴れマークは香川県のみ。それならと考えていた県外のお山は諦めて里山歩きに切り替えた。里山歩きなら近場を歩いて普段できていない用事も済ませたい。そう思って近所の山を調べてみるが、もうほとんどの山は歩いていて新たにという山が思いつかなかった。ただよくよく調べてみると地形図には載っていないがYAMAPの山頂ポイントに未登の山があるのを見つけた。
何年か前にWOC登山部メンバーと歩いた庵治の4座。御殿山・大仙山・遠見山、そして竜王山。その時は竜王山の手前に立石山があるのを見逃している。
(ただYAMAPの山頂ポイントにはまだなっていなかった?)
そして新たに竜王山の南に毘沙門山・裏毘沙門山がポイントとして追加されていた。これなら3座ポイントをゲットできるとニコニコ顔で出かけてきた。
 
 
 
近くの里山にしては後からの用事を考えて割と早めに家を出た。牟礼町から丸山峠を越えて庵治町に入って直ぐにあるしろばな公園。海沿いの公園は水際に沿って遊歩道が造られ、公園の中には庵治石のオブジェが飾られている。まだ低い位置にある陽の当たり具合で波静かな海と周りの景色の陰影がとてもきれいだ。
 
 
 
前回と同じように今日も庵治支所の駐車場に車を停めさせてもらう。
駐車場からまずは今日の山への取り付きとなる皇子神社を目指して港に沿ってぐるっと歩いて行く。
港町の朝は早い。波止場ではもう作業をしている人の姿、そして漁船からのエンジンの音が聞こえてくる。
 
 
 
その途中にある『雨平写真館』は『世界の中心で愛を叫ぶ』で度々出てくる撮影用に建てられた建物で、撮影後に一度は取り壊されたあとに復元されたレトロな雰囲気のする建物だった。
さらに道沿いにある建物は今は廃屋となっていたが、昭和感の漂うお店があった。平坦な道を歩いているだけなのに、ここまでですでに額から伝って鼻の頭からポタポタ汗が落ちてくる。標高の高い山なら気温も低くてまだしばらくは爽やかに歩いている頃だろうが、やはり平野部の暑さはまだまだ油断できない。
 
 
 
 
 
庵治港を南から北に回り込むと皇子神社がある。急な石段を『瞳を閉じて~君を描くよ〜』と口ずさみながら登って行くと、神社の前の広場にはブランコがある。これも映画のワンシーンに出てくるブランコだ。
 
 
 
 
庵治の漁師さんの守り神として権現さんと呼ばれ、毎年夏には急な石段をだんじりが降りて、全国的にも珍しいちょうちんで明々と照らされた漁船にだんじりや神輿や獅子が乗り込む『船渡御』がここからスタートする。
 
 
 
 
拝殿を参拝した後、その右手横から山の中へと入って行く。高松藩主の松平頼重公の別荘があったことから名づけられた御殿山山頂までは遊歩道が続いている。緩やかな坂を登って行くと目の前を小さな黒い物体が横切った。『ウリ坊だ!』と思った瞬間、『ブヒッ』と一声あげて林の中に飛び込んで姿は見えなくなった。ただその茂みの奥から『ビヒッ、ブヒッ』とおそらく親イノシシのさらに大きな威嚇の声が聞こえてくる。慌てて手に持っているストックをかち合わせて音をたてながら急いで小走りで歩いて行くと、次第にその鳴き声が遠ざかった。
 
 
 
 
 
 
御殿山山頂には見覚えのある東屋があった。ここまで来るとイノシシの恐怖からは逃れて一息ついた。この時期周りは草木が伸び放題だったが、西を見ると屋島の裾野の奥に高松のサンポートのシンボルタワーがくっきりと見えた。
 
 
 
 
 
山頂の東屋から一旦下って行くとこの山を囲むようにしてある遊歩道に出た。アスファルトの遊歩道を北に歩いて行くと道の脇に、真っ白な庵治白石照射灯が建っていた。照射灯とは陸上から強い高度の投光器により航路付近の岩礁など危険箇所を照射して、障害物の所在を航行船舶に示す施設で、ここでは白石という岩礁を照らしているのだろう。
 
 
 
 
その照射灯を過ぎてさらに歩いて行くと道の脇に巨大な花崗岩。大きな頭の下に口があってまるでマッコウクジラを横から見た感じ。
その先では道の北側が開けて、島影の間を小豆島からのフェリーが穏やかな瀬戸の海を走っていた。
 
 
 
 
 
御殿山をぐるっと回り込むと県道に出た。道の反対側の庵治観光ホテルの上の駐車場へ入り、山際の石積に掛けられたはしごを登って行くと、大仙山と書かれた小さな道標が立っていた。
 
 
 
 
山の斜面を登って行くと、以前あった耕作地への今は使われていないだろう荒れたコンクリート道に出た。道に沿って登って行くと大仙山の支尾根になる。
 
 
 
尾根道は樹林帯の中の道。確かに周りの木々が日差しを遮ってくれてはいるが、そろそろ気温が上がり始めて湿度も高いせいか、流れる汗の量が半端ない。足元にはツルボだろうか?薄紫の花が道のあちこちに咲いている。
その可愛い花の横をニョロニョロと長い蛇が動いて行ってドッキとする。
 
 
 
観光ホテルの駐車場から25分ほどで大仙山山頂に着いた。最初に目に飛び込んできたのは瓦屋根の載った石造りの立派な雨乞祈祷所だ。瀬戸内に面した半島のほぼ先にある庵治町は、三方を低い山に囲まれて大きな川もなく、昔から夏になると水不足に悩まされていたのではないかと思う。そのせいか祈祷所は荒れた様子もなく今でも大切にされている気がした。
 
 
 
 
祈祷書の横には南に向かって観音様が立っている。その目線の先には普段見慣れた五剣山とは少し山容の違った五剣山の五つの峰が並んでいた。
頭の上ではトンビが『ピーヒョロ』と鳴きながら、風に乗って気持ち良さそうに飛んでいる。
縄張りなのか大きなクマンバチが頭の周りをグルグル回って、隙を見て刺してこようとしている。その度タオルで振り払うので最後は腕がだるくなってきた。
 
 
 
 
 
祈祷所の屋根の下の日陰で腰を下ろして一息入れる。ここまでですでに500mlのスポーツドリンクを一本飲んでしまった。今日は残り一本しか残っていない。果たして最後までもつか心配になってきたが、幸い竜王公園の駐車場に自動販売機があったのを思いだし、何とかなりそうだと考えザックからもう一本取り出した。
山頂から下って行くと庵治町の郊外から笹尾の集落に抜ける竹峰峠に降り立った。峠には大仙山山頂にあった立岩の説明が書かれた案内板がある。峠道をまたいで向かいから今度は遠見山へと取り付く。
 
 
 
峠の取り付きから登って行くと直ぐに南無阿弥陀仏と彫られた石柱とお地蔵さんがあった。この峠もそうだがここから先の峠も新しく道が造られ切り通しになっている。従来の峠道だった場所は今の峠から離れた場所だったようで、今切り通しになった峠からは少し離れた場所にお地蔵さんが立っている。
お地蔵さんから少し先には石祠。こちらは台座が新しい庵治石で造られていた。先ほどのお地蔵さんの南無阿弥陀仏と彫られた石柱といい、この台座といい、さすが庵治石の産地だけある。
 
 
 
石祠を過ぎると道には巨石が点在し始める。香川の里山の尾根ではよく見られる風景だが、この道の岩はとにかく大きさが飛びぬけてデカイ!
こんな巨大な花崗岩が露岩となるのはどうなってなのか、また一度興味がるので調べてみたい。
それにしてもこの道筋は蜘蛛の巣だらけだ。毎回毎回ストック振り払うが、う
っかり見逃すと顔にそのままベタ~とまとわりつく。
 
 
 
 
 
 
そのうちに尾根の南側に平らな展望岩が見えた。その展望岩の端に立つと庵治町ののどかな田園風景の奥に屋島が見える。平らな岩の横にある小さな岩に腰掛けて、ズボンの下が暑気していた着圧のタイツを脱ぐ。ここ最近は着圧タイツのせいで同じように暑気がしていたので、ショートのパンツをはいていたが、今日はこの時期草木で道が荒れていたらと思って、普通のトレッキングパンツをはいてきたのが間違いだった。タイツを脱いだお陰でズボンの中が急に体温が下がったような気がした。
 
 
 
展望岩からさらに先に進むと、今度は北側の景色が広がり西鎌尾根と書かれた道標の横にテーブルとベンチが置かれていた。
波静かな瀬戸内海の青い海の向こうに小豆島が横たわっている。星ケ城を最高地点とする峰々をよ~く見てみると、その東端の千羽ケ岳の山頂の下に見覚えのあるちょこんと尖った峰が何となく見える。デジカメの望遠で見ると、セニョさんと二人で登った親指岳だった。
 
 
 
西鎌尾根から八幡神社の道標の建つ分岐を過ぎると今日三座目の遠見山に着いた。山頂からは南に五剣山。西にはこれから行く立石山と龍王山が見えた。
 
 
 
 
 
 
 
この遠見山山頂は屋島城ができた奈良時代にはのろし台があった云われている。その狼煙を焚いた場所だったのか広場の手前には窪んだ場所があった。そこから見える屋島は本当に平らで屋根の形をしている。反対に五剣山の峰は指を閉じて小指を立てているように見える。
山頂広場には丸太を横にしたベンチがある。ここでも水分補給と小休止。ただ水分を採ってもなかなか息切れが収まらない。
 
 
 
 
 
山頂から少し下って行くとまた見晴らしのいい展望岩があった。ここからは下に鎌野の集落と港が見える。先ほどの西鎌尾根の展望台はこの鎌野の集落から名づけられたのかもしれない。当然だが槍ケ岳の西鎌尾根とは関係ないだろう。東側に見える竜王山と手前の立石山。おむすびの形をした立石山は山頂までひと登りありそうな形をしていた。
 
 
 
 
 
それにしてもこの遠見山山頂の前後には巨岩が多くみられる。遠目に全景を移したのではその大きさは分からないと思ってストックを置いてみた。1m15㎝に伸ばしたストックと比べると、やはり3m以上ある大きな岩だ。そして他の山でもよく見られる大きく縦に割れてその隙間に落ちずにいる小さな岩が複雑に風化する花崗岩の特質を現している。
 
 
 
 
 
 
この大岩を過ぎるとウバメガシの林の中の尾根道となる。足元は花崗岩が風化してザラついたとても滑り上に、ウバメガシの小さな乾いた葉がさらに滑りやすくしていた。ただ今日は独り歩き。慌てることもなくとにかくゆっくりゆっくりと下って行く。すると目の前に立石山らしいピークとその下にアスファルト道が見えた。下って行くときれいな花が供えられたお地蔵さん。さらに下りて行くと奥ノ坊峠と書かれた道標があった。地形図には線がなく、新しく舗装路がついているがこの場所も昔から南北の峠だったのだろうか。里からは少し離れた場所にも関わらず、こうやって花が供えられているのを見ると、地元の方の信仰心の深さを感じる。
 
 
 
 
 
 
 
舗装路から立石山へと取り付くと直ぐにこちらにも馬塚とお地蔵様。遠見山から見えた通り立石山へは花崗岩の風化した滑りやすい急登が続いている。
汗の量もそうだがとにかく息切れが酷い。そういえばどこかの山で最近同じようになったな~と思いながら一歩一歩踏み出し登って行く。
 
 
 
 
 
山頂近くなるとほとんど『ハアハア、フウフウ』と息遣いがとにかく荒い。
それでもやっと着いた立石山は素晴らしい景色で出迎えてくれた。木々が伐採され正面に見える小豆島には、空高く登った入道雲が覆い被って、その上には青々として澄み切った夏空が広がっていた。
 
 
 
立石岩から下って行くとまた巨岩が転がっていた。そのうちの一つの女郎岩と名付けられた岩にはその手前で道標がかかっていた。
道標の矢印の方角に少し下って行くと、女郎岩と名札がかかった巨岩があった。『ん・・・?これが女郎岩?』と思いながらその横を通って更に下って下から眺めてみるとなるほど・・・・。おかっぱ頭の女性に見える。
 
 
 
 
 
 
女郎岩から引き返し東に下って行くと車道に出た。車道から見える二つの山が毘沙門山と裏毘沙門山だろうか?
 
 
 
竜王公園へと続く車道を歩いて行く。登坂の続く道、日陰を選んで歩いて行くが今まで以上に息切れが酷い。2本目のスポーツドリンクも飲み干した。これで公園に自販機がなければ万事休すだ。
 
やっとの思いで着いた竜王公園の駐車場のトイレの横に、待ちに待った自販機があった。今までスポーツドリンクで口の中が甘だるくなっていたので、ミネラルウォーターを買い求める。
自販機から音をたてて落ちてきたミネラルウォーターは取り出すとバッチリ冷えていて、早速すぐ横の東屋の下でゴクゴクと半分以上飲み干した。飲んだ後にこれではまた足りなくなると思ってもう一本慌てて買い足した。東屋の先にある展望広場からはまた瀬戸内海の絶景が広がっていた。
普通ならのんびりとこの景色を楽しんでいるところだが、今日はすぐに東屋の日陰に戻ってまたミネラルウォーターをゴクリと口にする。
 
 
 
 
お腹の中でタプタプといい始めたので、重い腰を上げて公園へと歩いて行く。いつもなら芝生の丘の中を石のオブジェを眺めながら登って行くのだが、遮るものがなく日差しのキツイ公園を歩く、そんな余裕もなく歩きやすい舗装路の日陰を選んで歩いて行く。一応舗装から見えた石のオブジェを遠目から写真に撮ってみた。
 
ただ公園の小高い丘の上にある見晴らし台へは日陰となる道は階段を登って行かなければならなかった。ここでもうほとんど熱中症状態。汗の量と息切れが半端ない。水分は十分に採ったつもりだったが、その量に対して塩分をほとんど採れていなかった。
やっとのことで登った腕時計の形をした見晴らし台でも容赦なく日差しが照り付ける。360度の屋島・小豆島そして志度湾の大展望を楽しむ余裕もなく早々に次に向かって見晴らし台を降りて行く。
 
 
 
 
 
 
 
 
時間は10時55分。愛嬌のある日時計の鳥は11時を指していた。
 
 
 
見晴台から南に公園の道を歩いて行くと兜を被った武神像が祭られた竜権さんがある。明治の時代に日蓮宗の信者によって『南無妙法蓮華経 』のお題目と八大竜王が祭られ、武神像が刻まれたそうだ。
尾根道を南に下って行くと目線の先に裏毘沙門山が見えた。ただここまででもうほぼ限界。下っているのに息切れが収まらない。
 
 
 
 
 
 
これ以上歩いて登っても、まだ車を停めた駐車場まではけっこう距離がある。そう思って今回は残りの2座を諦めた。
車道に降り立つ手前で岩をくり抜いてお地蔵さんが立っていた。今日のコース上では、すべての峠にお地蔵さんが祭られていた。峠とい云ってもそれほどの高さでもなく、町から集落へもそれほど人の行き来があったようには思えないが、それでも行き交う人の安全を祈って見守っている。
 
ここから庵治支所までは舗装路歩き。車道を右に左に日陰に沿って下って行く。
しかし先ほどと同じように息切れが激しくなるばかり。木々に囲まれた山の中と比べると、アスファルト舗装の路面の温度は高い。
途中一度日陰で少し風が吹いてくる場所で、大の字なって寝そべった。里山だと思って履いてきた、ショートの靴は靴底が柔らかくて、足の裏が酷く暑く熱を持っていた。靴も靴下も脱いで大休憩。
 
 
 
しばらく休んで気を取り直して舗装路を下り郊外の平地になると、今度は日陰がない。道の脇の建物でできた日陰で何度も何度も立ち止まって休みながら、何とか支所の駐車場にたどり着いた。
 
 
 
 
支所の建屋の横には『世界の中心で愛をさけぶ』のロケ地の大きな案内板が立っていた。その中心で愛は叫ばなかったが、ただただ大汗を掻いた一日だった。
まだまだ里山歩きには厳しい気候だと思い知らされた。