花・花・花の大山一ノ沢から正面登山道を周回!

 

 

昨年はエントツ山さんアカリプタさんそして西の奥様たちと5人で登った大山三ノ沢。ザレた沢から槍ケ峰に続く道の途中は、一面イワカガミのお花畑が広がっていた。

今年も是非ともまた見てみたいと思ってYAMAPをずっとチェックしていたが、たしかに直近で登っている人はいるが、お目当てのイワカガミの写真が一向に上がってこない。

今年はどこの山でも花の開花が遅れているので三ノ沢のイワカガミもご多分に漏れずかな思っていたら、一ノ沢ではどんどん写真がアップされている。天気予報では来週あたりから梅雨に入りそうな予報だし、登るなら今週しかないと思い、予定を三ノ沢からノ沢に変更。

早速昨年我々と三ノ沢で別れた後、翌日に一ノ沢を登っエントツ山さんにルートの確認でLINEを入れて教えてもらい、西の奥様に連絡をとる。奥様はルートの心配よりもやはり朝の集合時間の早さが気になるようだ。

 

昨年同様、丸亀で6時に待ち合わせをして一路鳥取県へ。米子道溝口で降りて緩やかな高原の坂道が続く県道45号線を車を走らせる。普段だとこのまま升水高原から大山環状道路を一ノ沢まで走れるのだが、現在は通行止めで立ち入る事ができない。

仕方がないので升水高原に車を停めて、一ノ沢まで下道を2.5km歩かなければなかった。丸亀からはおおよそ2時間強で升水に着いた。升水の駐車場には姫路ナンバーの車が一台停まっていた。駐車場のトイレで用を済ませて45線環状道路へと歩き出す。

駐車場から升水高原スキー場を横目に見ながら歩いて行くと、道は大きなゲートでふさがれていた。

 

ゲートの横を通って環状道路へと入って行く。通行止めなので車を気にせず歩いて行けるが、道はけっこうな登坂だ。吐く息は白く、鳥の鳴く声だけが聞こえてくる。

 

 

予定では30分ほどの下道歩きと思っていたが、登坂だったせいか40分ほどかかって一ノ沢に着いた。登山口へはここから左に入って行くのだが、通行止めの原因になっている一ノ沢にかかる橋を見に少し先まで歩いて行く。

 

一ノ沢に架かる一ノ沢橋が3月に発生した大規模な雪崩で雪に埋もれ、橋桁が下流側に1m以上動いていた。路面も段差ができてとても車が通れる状態ではなかった。

 

 

 

 

竣工が令和4年と比較的新しい橋がこんな無残な姿になってしまうなんて、自然の力の凄まじさを感じずにはいられない。その橋の上から眺めた一ノ沢。橋のすぐ下にはまだ雪渓が残っていたが、何事もなかったように砂防ダムの奥の大山は青空の下で悠々と輝いていた。

 

 

橋から戻って登山道へと続く砂防ダム用の作業道を歩いて行く。作業車が通行するために道はコンクリートの道が続いていたが、こちらも本当に作業車が走っていけるのかと思うくらいの急登だった。

 

 

何度か折れながら続く道を30分ほど登っただろうか、正面の木々の間から大山の南壁が見えた。幾重もの筋になった荒々しい岩の壁が間近に迫って来て感動すら覚える。

 

 

 

さらに少し先まで登るとザレた一ノ沢の斜面の上にタケノコ岩が見えた。ここからその左手、一ノ沢の最上部まで登って行くことになる。

登山口は道の脇にテープを巻いた太い鉄筋が目印だった。取り付きから踏み跡を見ながら木々の中へと分け入ると、『エ~ここを登るの?』と思うくらい見上げてしまう急坂。しかも昨日からの雨降り後で少しぬかるんでいて登りづらい。

 

 

 

 

それでも何とか登って行くと急に目の前に展望が広がった。前方の斜面の奥に薄く弓ヶ浜の曲線が見えた。

 

 



さぁここからは歩きやすくなると思っていたが、まだまだ背の低い灌木や笹をかき分けながら登って行くことになる。

 

 

 

足元にはアカモノ。そしてまだ花の咲く前の明るい緑のギボウシの葉。そして今日お初のイワカガミを見~っけ!

 

 

 

一ノ沢の際まで来るとその灌木を掴みながら、とにかく右側に落ちないようにしながら登って行く。すると右手に独特な形をした烏ケ山が見えた。『あの山も登りたいね』と指さしながら奥様と話をする。

 

 

こんな時にアカリプタさんがいたなら次々と咲く花の名前を教えてもらえるのにな~なんて思いながら、道の脇に咲く花を眺めながら登って行く。

 

 

振り返ると先ほどまでいた一ノ沢橋が見える。色白のイワカガミ。これくらいの薄い色のイワカガミも可愛らしい。

 

 

ギボウシの柔らかい葉に一面包まれた斜面がしばらく続く。その大きな葉の間に小さな花が咲いている。

 

 

 

 

 

沢の斜面の際の土や岩が流れないようにネットが張られていたのだろうが、どれも流されていたりして用をなしていなかった。

 



足元にはダイセンクワガタが目立ち始める。ただ昨年三ノ沢で見たのより、なんだか小ぶりなように思うのは気のせいかな?



 

 

 

上の方のお花畑で写真を撮っていた人影が下からずっと見えていたが、その人が上から降りてきた。その男性は今日は山頂までは行かずに花の写真をたっぷり撮ったので、このまま降りて行くと言う。聞けば駐車場で先に停まっていた姫路ナンバーの車の持ち主だった。

撮ったスマホの写真を色々見せてくれたが、おそらく今日は何百枚と撮っている様子だった。さっきまでの灌木を中をかき分けたり、急坂を登ってきたりしていたので、この道を降りて行くのは・・・・?とこの時は思ったが、山頂からの正面登山道の下りではその考えは変わった。その男性とはお互いに『お気をつけて!』と声をかけあって別れた。

 

ここからはお目当てのイワカガミのお花畑が続いて行く。斜面にあちらこちらでかたまりになって咲いて、それが見える限りの斜面に続いている。

三ノ沢ではどちらかと云うと岩稜の岩肌に咲いていた記憶があるが、この一ノ沢ルートでは、広く広がった斜面がピンク色に染まっている。

 

 

 

タテノコ岩が近づいてきた場所で、先ほどから強くなってきた風のせいで奥様が『寒くなってきたので一枚羽織ります!』と。それじゃ私もとザックから薄手の上着を出して羽織る。

『せっかくだからここでコーヒー飲みます?』と言ってくれたので、腰掛けて熱いコーヒーをマグカップに注いでもらう。

肌寒い風が吹いてはいたが温かいコーヒーを飲みながら、右も左もそして目の前もイワカガミに囲まれ、烏ケ山や裾野の緑の丘陵地が広がる景色を眺めながらの至福の時間を過ごす。

 

 



 

 

ここからはさらにイワカガミのオンパレード。しかもそこにツガザクラが加わっての二重奏。イワカガミの赤とツガザクラの白のめでたいめでたい花の園、花畑、花の道。しかも周りは四国ではまず見ることのできない雄大な景色が広がっている。

 

 

 

 

今までツガザクラ銅山峰でしか見た事はないけれど、これだけの圧倒的な数を見て目を丸くする。

 

 

 

『全然緩やかにならないわね』と奥様が愚痴をこぼす。『たしか上の方は緩やかな斜面だったのに』と仰るけれど、それはたぶん見間違い。上に行く程傾斜は急なはずです。

『山頂台地まで登らないと緩やかにはならないですよ!』と言うと『え~おかしいな~』と文句を言いながら登っている。

 

 

 

 

 

それでも少しづつ山頂が近づいてくる。振り返ると一ノ沢橋が遥か下に見えた。

そして弥山から続く稜線には天狗ケ峰三ケ峰だろうか?昨年エントツ山さん達と歩いた峰々が見渡せた。

 

 

 

 

この辺りが一ノ沢の最上部になるのだろうか。赤茶けた色の土の上に岩がゴロゴロ転がっていた。その麓を見ると今までの緑の山肌とは全く異なる、雪で削られた荒々しい山肌が続いていた。

目の前には雲がひとつ、ゆっくりと我々を見守るかのように流れていっている。

 

 

 

 

ようやく山頂避難小屋が見えた。そして西側には裾野で見たよりもくっきりとまさしく弓の形をした弓ケ浜が見える。

 

 

山頂碑の前で避難小屋の方から登ってきた女の子が二人腰を下ろして休んでいた。

『どこから来たん?』と尋ねると『大阪からです』と笑顔で答えてくれた。大阪からは2時間半ほどかかったという。『香川からと同じくらいね。ただ橋を渡る分、高速料金が高いわ』と奥様。

記念撮影を頼んで撮ってもらう。代わりに写真を撮ってあげるとそこは女の子、楽し気なポーズをとったので、私たちもマネして、おじさんおばさん二人が恥ずかしげもなく取り直してもらう。

 

 

山頂碑の後ろからは大山の最高峰になる剣ケ峰。そして毎年こちらも夏にお花畑ができるユートピア避難小屋三鉾峰が見えた。

 

 

外は風が強いので、避難小屋の中でお昼にする。無料で休憩できる小屋には強風を避けて次々と登山者が入ってくる。

お昼を食べ終え出発しようとしたら、目の前に座っていた先ほどの若い女性二人が『無料の温泉のチケットがあるんですけど使いませんか?』と声をかけてくれた。温泉の好きそうな年配者に見えて気を使ってくれたのか?『せっかくだけどその温泉と今から降りる場所の方角が違うので』とお礼を言って別れた。

 

小屋を出るとさっそく風が吹き上げて被った帽子を飛ばそうとする。少しきつめにかぶり直して、このまま米子の街に飛んでいけそうな木道を下って行く。

離合する度に立ち止まる少し幅の狭い木道だったが、これだけの景色を眺めながら歩ける木道はそうそうない。この瞬間、この爽快な景色を見られただけでも今日やってきた価値はある。

 

 

 

 

木道は至る所で補修がされていたが、石室コースも木道修理のための立ち入り禁止になっていた。その場所から少しだけ立ち入らせてもらって、正面登山道へと向かう。

 

 

山頂台地に続く木道は、昨年夏に歩いた白山弥陀ケ原を思い起こさせる。僅か2時間強の移動でこんな素晴らしい景色が見られるなんて、本当に大山はいい山だ。

 

 

 

石室コースから外れて、いよいよ升水への直滑降の始まり。この正面登山道は何十年か前には地形図にも破線が載っていたらしいが、今は線もなく廃道となっている道だ。

左手に升水高原スキー場と車を停めた駐車が見え、その右横には『大山まきばみるくの里』の広大な観光牧場が見えた。

 

急な坂道をほんの数メートルごとに折れた九十九折れの道。いや九十九折れではなく九百九十折れと言ったところだろうか。今までこれだけ細かくターンを繰り返したことがない。

 

 

 

右に折れると弓ケ浜、左に折れると升水高原を何度も何度も繰り返す。

 

 

登ってくるときに奥様が『帰りの下りの道にも花は咲いてるだろうか?』と言っていたが、なかなかどうしてこちらもイワカガミのお花畑が続いていた。

そのお花畑の中をジグザグジグザグ下って行く奥様。登りに比べると歩きやすい足元だけれど、とにかく角度が半端ない。油断して転んだりしたらとんでもない事になるので気が抜けない。

そして今日は着圧のタイツの上にさらに膝サポーターと用心をしてきたけれど、そろそろ膝が文句を言い始めた。さらには左の膝を庇っていたせいか右の膝も騒がしくなってきた。

 

 

 

この正面登山道でもイワカガミだけでなくツガザクラも仲良く並んでいる。

 

 



草原の斜面からそろそろ樹林帯に差し掛かり始めて、イワカガミの数も減ってきた。最後のイワカガミの写真を撮ってお別れを言う。

 

 

 

反対にレンゲツツジのオレンジ色が目立ち始めると草原斜面は終わりをつげ、胸まである低木の中に踏み跡が続いていた。その低木をかき分けかき分け進んで行く奥様だが、とにかくこの辺りの木の枝は固くて難儀をする。

 

 

 

次第に踏み跡を見失い、鬱蒼とした茂みの中を垂れた木の枝を再三屈んで潜り、そしてお尻をつきながら下って行く。

 

 

『これって藪コギ?』と奥様が聞いてくるが、確かにこれくらいの茂みの中を藪コギして、膝を付いたりしながら歩いたことはあるが、ここまで長い距離を屈みぱなしになったことはない。

かなりの時間悪戦苦闘しながら下っていたが、とにかく道を外れてしまったようだと気づくのが遅すぎた。地形図を見てみるとどうやら谷筋を降りて行っている。ここでルートを東に振って修正をする。

 

 

するとすぐに登山道らしき踏み跡のある場所に出た。『これが正解ね!』と奥様。

登山道らしきこの道を下って行くと、下から登ってくる年配の男性。すれ違いざまに話をすると、島根の人でこの大山にはよく来ているらしい。『この時間に登って行くの?』と思ったが、今日は山頂までは登らないらしい。

『この道はほんとは歩いたらいけない道やから、内緒でね』と言って、自身が歩いた四国の山の話とかをしてくれた。

『山登りは健康にいいから!』と仰る男性は、さすが余計なお肉がついていない。是非ともますます膨れていく私のおへそ周りの浮き輪を分けてあげたい。

ここでも『気を付けて!』と声をかけあって別れた。

 

 

山頂の木道を離れて下り始めておおよそ2時間。やっと升水高原スキー場のゲレンデが見えた。ゲレンデとこの登山道の境目は、その昔山陽方面から大山寺へと通る横手道呼ばれる大山道の内の一つの参詣道になっていて、大山寺から一ノ沢の手前への横手口まで、ほぼ等高線に沿って緩やかな道が続いている。その横手道を横断してさらに下るとゲレンデの最上部に着いた。

 

 

その場所は恋人の聖地と名付けられ、全国各地で見られるのと同じようにカップルがカギをぶら下げていた。

 

テラスには何人もの人がリフトに乗ってやって来て、ここからの風景を眺めていた。奥様もテラスの椅子に腰かけて一息いれる。

登りの一の沢では下りには使いたくないと言っていた奥様が、こちらの下りの急な九十九折れに加えて、今年最悪の藪コギに懲りたのか『こちらから登って一ノ沢に降りた方がいいかも』と言っている。

 

恋人の聖地を後にゲレンデの真ん中をラストスパートで下って行く。そのゲレンデの向こうには升水の高原が広がり、ゲレンデの草の上を撫でて爽やかな風が吹いている。とにかく今日のラストにふさわしい景色と爽快感。いつまでもこのままでいたい気分だ。

振り返ると山頂の横に月が昇っていた。

 

 

 

 

ゲレンデのリフト乗り場の横にはヤギが一頭。近くにいた女性たちが山をバックに一緒に写真を撮っている。今風にいうとインスタ映えする写真なのだろうか。

登り下りで出会った男性二人と山頂で話しかけた若い女性二人。今日はいつも以上に楽しく話ができた。出会った人たちも良かったが、それ以上に最盛期を迎えたイワカガミとツガザクラのお花畑と、山頂からの雲一つない絶景。どこを切り取っても今年一番の山歩きができた楽しく幸せな一日だった。

奥様は初めて登った大山の弥山が、夏山登山道ではなく反対側の一ノ沢からという珍しい経験となった。

『年に一度は来なくちゃね!』と言いながら、蒜山SAのソフトクリームを食べた後家路へと車を走らせた。